みやざきけんいちの半生8
モテる訳でも無いのに、稲丘藍子と西杏子の事をはっきり出来ない私に、何故かタイミング良くというか、西杏子からの相談の電話がぱったりと止まる。その頃、私はというと、稲丘藍子からの電話が、寮へ1日置きに掛かって来る状態で、仕事が忙しく、いつも寮に居ないのにも関わらず、帰ると寮の黒板に電話ありの文字が書いてあったのだった。いつもその後に電話を掛けて、彼女と話しながら、他愛の無い話を1時間ほど続けて、それでも切らない彼女に対し、『逢おうか?』の言葉を出して、ようやく電話を切る事が出来るような日々を過ごしていた。いつも、逢うのは10時過ぎで帰るのが12時を過ぎてしまう。自分の中では、好きなのかどうかわからぬまま、初めのキスの事が済まないと思った気持ちからどんどん流されて、いつの間にか相手のペースに巻き込まれているようだった。
出会い始めて3ヶ月が過ぎようとした頃、2人の間に変化が起き始めた。彼女が電話口で、
『貴方と逢っていると友達との時間が取れない!』
と一方的に私を責めた。私自身、いつも流されるがままに逢っていたのに、私のせいでと言われてしまうと、正直、『何を言ってるの?』と逆にわがままな彼女の一面を見てしまい、拍子抜けしてしまっていた。ただ、彼女が本当に友達との時間が欲しくて、私のせいで時間を無くしてしまっているのなら、私のペースに合わさなくてもいいのではと思い、
『友達と逢いたいのなら、逢っていいよ。私は仕事が忙しい時もあるし、夜も遅いから待って無くてもいいよ。』
と、電話口で話すのであった。
そんな話をしてから、少し経って、奈良の現場からの帰り道、24号線を南下中に、ある姿を発見した。それは見覚えのある後ろ姿で、男と2人きりで歩いていた。友達と遊びに行っている話は良く聞いたが、てっきり女性の中の親しい子だとばかり思っていた私は、直接確認しようと思ったが、既に姿が無く、1度寮へ戻るのだった。
しかし、自分の気持ちが納まらず、オトコと逢いたくて、ああいう電話をしてきたのかと、自分が情けないやら、彼女の気持ちがまったく見えないやらで、とにかく本人に聞かないと気が済まないと思い、そのまま彼女の家の前で、彼女が帰るのを待っていた。当時は携帯電話という便利なものも無いし、まだポケベルも普及していない中で、連絡を取るとなると、帰りを待つくらいしか無かったので、彼女が帰ってくるまでの2~3時間、私は車の中で、じっとしているしかなかった。
彼女が12時頃帰って来た。彼女は少し飲んでいるらしく、アルコールの匂いがした。私は彼女が家に入る前に、車を降り、慌てて呼び止めた。すると彼女は私が待っているなんて思っても見なかったらしく、少し驚いたみたいだったが、すぐに冷静になった。
『今日、誰と遊んでいたの?』
と質問する私。すると彼女は
『友達と飲んでたよ。なに?』
と普通に答えたのだった。その後すぐに、
『今日、大和高田市駅の近くで見かけたよ。』
と言うと、少し間をおいて、こう答えた。
『あ~。だから友達だよ。みんなと一緒だよ。』
『そう?私が見た時は2人だったけど・・・。』
彼女は口を閉ざしてしまった。暫くして彼女は家の中に入り、電話を掛けていた。
とりあえず、私は家の中に招かれ、2人で中に居ると、1人の男性が入ってきた。
すると、彼女はこう言った。
『友達の中の1人だけど、逢ってて楽しいし、好きな人。あとは2人で話し合って。』
と・・・。
言葉が出なかった。というより呆れてしまった。カレに私はなんと言えばいいのだろう。彼女と別れてくれ?それとも、なぜ私の彼女を取ったんだ?考えれば考えるほど、沈黙がずっと続く中、馬鹿らしくなってしまい、私が、
『頑張って。』
と言葉を残し、その場を去った。
元々棚ボタみたいな始まりだったから、こんな感じでもいいのかな・・・、片想いでも、好きな人を見続ければいいのかなと思い、車を運転していた。既に時間は夜明け前の5時になっていた・・・。
続く
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