みやざきけんいちの半生11
【妥協】
稲丘藍子の病気を境に、また私の人生も変化し始めていた。
彼女とまた逢うようになり、次第に拠点が彼女の家になって行くのであった。
勿論、彼女の父親や姉は同じ家に住んでいたのだが、父親はほとんど帰らず、他の場所に拠点を持ち、姉は帰ってくるものの、干渉しないタイプで、私が居てもお構いなしという感じであった。
1日のサイクルが、仕事を終えると、風呂に入ってそのまま彼女の家へ向かい、彼女の家でアルバイトの図面を書くという毎日。アルバイト代はそのまま彼女とのデート代で全て消えてしまうというパターンにも関わらず、黙々とこなしていった。そうしている中で、彼女はカレに私の事を言い出せないまま時が過ぎていくのだが・・・。
私も西杏子の事が頭から離れないのだが、置かれた環境の中でズルズルと行ってしまい、西杏子との関係が進展しないままだった。そうしているうちに、稲丘藍子がカレに私の事を告げ、次第に外堀を埋められていた。
そして、ある日・・・。
いつものように私は彼女の家に居たのだが、彼女がいつもと様子が違って、何かが引っ掛かっているようで、イライラしているようだった。始めは知らん振りしていたのだが、あまりに変なので、私から話を切り出した。
『どうしたの?』
彼女はこう言った。
『このままズルズル続けていたら、また別れてしまう気がする。宮崎に行くか、別れるかどっちかしか無い!』
正直、突然の言葉に唖然としてしまったのだが、これまた何も考えずにその場の雰囲気に流される私が一言、
『じゃあ宮崎へ行くか。』
『うん・・・』
これだけで、これから先の人生を決めてしまったのであった。
この時既に夜明け前の4時。
そこからの行動ははっきり言って理解し難く、自分でも何故?と思うのだが、やる事は速かった。
まず、実家の親に電話を掛け、母が病気で入院したと会社に8時頃電話するように言い、その後、彼女には宮崎へ行く支度をしろと言い、私は寮へ帰り、自分の分の身支度をして、そのまま彼女を迎えに行き、羽田空港へ向かった。
私は空港から会社へ電話をして、家から電話があり、母親が倒れたので、今から帰りますと言うだけ言って、仕事のことも考えずに帰るのであった。
家に帰り着いたのが、お昼。
当然親も何があったのかわからないまま、呆然としていたが、私が口を開き、
『彼女と結婚することにした。宮崎にも帰ってくる。』
と言うと、ホッとしたようで、2泊3日の報告旅行を済ませるのであった。
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